10億かけて蘇った、和洋折衷の「松代家住宅」を堪能!

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こんにちわ!

日本中の知られざるスポットを発掘してブログにしている『知の冒険』。今回は、静岡県沼津市の戸田村という場所にある素晴らしい近代建築を取り上げようと思います(*´▽`*)

ちなみに戸田の読み方は、”とだ” ではなく “へだ” ですぜ!!

戸田村というと、世界最大のカニであるタカハシガニで有名だったり、あとはロシアのプチャーチンの物語などが眠る場所でもあり、結構面白い場所なんですが、いかんせん鉄道が通ってなかったりとアクセス面ではなかなか生きづらい場所だったりするんですよね。。

でもでも、今回紹介する松代家住宅は本当に素晴らしい建物で、建築好きの方であれば絶対楽しめる場所だと思いますので、館内の様子や歴史などを以下で紹介しますね~~(*’▽’)

本記事のポイント

・廻船業で財を成した、松代家の住宅だった建物
・1階が和風、2階が洋風という和洋折衷の擬洋風建築
・石造り風の外壁やニセ窓を漆喰で作るなど、見ごたえ満載

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廻船業で財を成した松城家の建物

ということで、今回は静岡県沼津市の戸田という場所にやってきました。

地図を見てもわかるように、戸田は伊豆半島の西側に位置してるんですが、この辺は関東からだと車でもなかなか行きづらい場所でして、自宅が川崎にある私は、めっちゃ朝早く出て4時間くらいかけてやってきました!

まぁ普段死ぬほど運転してるので、このくらいは余裕ですけどね・・(^○^;)

戸田村を走ってると、明らかに外観が他の建物と異なる巨大住宅が現れるんですが、こちらが松城家住宅。周囲を石垣が囲み、真っ白な外壁に緑や青のカラーも見られる豪華な建物。

ここは海から200mほどの場所で、ここまで水路が通っていたそうです。小舟で海から直接来ることができたってことですね!

ではでは、早速館内へ!

1階と2階で雰囲気が異なるのが凄い

私が訪問した時は2,3組のお客さんがいるくらいで、かなり自由に見学ができる感じ。希望すればスタッフの方が20分くらいかけて解説してくれますし、1階には館内を紹介したビデオもあるので、その辺を見ればある程度この建物の概要は把握できるかと思います。

んで、館内を紹介する前に、まずは少しこの建物の歴史について書こうと思います!

この松代家住宅は、明治5年頃から建てられ明治9年に完成した建物。港町として栄えた戸田ですが、この建物を建てたのは廻船業で栄えた松代兵作(まつしろ・ひょうさく)という人物でした。

今から200年ほど前に発生した飢饉のとき、秋元兵作鎮陳(あきもとひょうさくやすのぶ)が私財を投じて人々を救ったことから、この功績を戸田村の領主から称えられ、苗字帯刀を許されるとともに、「松代」の姓をうけて松代兵作を名乗るようになりました。

松城家にはそうした背景があったそうですが、この建物は、三代目の松代兵作が廻船業で財を成し、その資金をぶっ込んでこの建物を建てたそうです!

松城家住宅について
1. 明治5年から9年にかけて竣工
2. 廻船業で材を成した松城家によって建てられた
3. 風水を生かした家相図をもとに設計
4. 平成18年に、国の登録有形文化財に指定

この建物は、1階が和風で2階が洋風という和洋折衷な建物で”擬洋風建築”ともいわれるもの。

“擬洋風建築”とは、伝統的な日本風建築に西洋風の衣装を取り込んだものです。江戸末期の開港により文明開化の波は建築の分野にも及び、洋風な建築様式も積極的に取り入れられるようになりました。しかし、地方の大工は洋風建築に携わったこともなければ見たこともない。

そこで大工たちは、日本の技術と手に入った材料を用いて西洋風なものを模したってわけです。

そしてこの建物は、最近までずっと改修工事をしてました。その期間は6年。改修費用には10億円かかったそうですが、2016年から工事が始まり、2022年11月には工事が完了したということで一般公開されることになっています!

異世界感あふれる洋風の間

ではでは、ここから館内をいろいろ紹介していこうと思うんですが、1階はすっ飛ばして二階から紹介します(笑)

この階段の曲がり具合も素晴らしいっすね!

本当は1階から紹介すべきところなんだと思いますが、1階よりも2階の洋風な方がインパクト強いと思いますので( ;∀;)

この螺旋階段もすごく造り良いですよね。この階段を上った先には、、、

ランプが印象的な応接間

こんな光景が現れます!!!

天井の模様、吊るされたランプなどこの空間に浸るだけでもすごく癒されます。戸田村は静かな港町で昔ながらの建物も多いなか、こんな洋風な光景がみられる建物があるなんて、そのギャップもたまんないっす。

アメリカへの出稼ぎが背景にあるオイルランプ

このランプについてはちょっとした物語があるということで、スタッフの方が背景を話してくれました。

松城家住宅がある戸田から少し北上すると井田集落という場所があるんですが、そこはアメリカへの出稼ぎをした方が多かったそうで、向こうへ渡った方が日本へと持ち帰ったランプが、こうして吊るされているとのこと。

井田集落って聞いたことないですが、そこにもアメリカに渡るきっかけとなった歴史が何かあるんでしょうか?こういう話を聞くと、調べずにはいられないんですが、それはまたの機会に!

二階の部屋は、天井に張られた幾何学模様の紙が洋風感を醸し出してはいるものの、床は畳となっておりここだけでも和洋折衷が取り込まれています。畳を見ると普通のものとは違って縁が無いですが、これは琉球畳というらしいっすね。

窓際のこうした光景が凄く印象的で、日の入りとかも素晴らしい。

部屋と部屋の仕切りが実に独特
一番右の扉以外は、窓ではないんですね・・

そんで、二階の造りの中でも特に注目したいのが、こちらの扉。緑と青の色合いがたまらないというのと、窓が三つあるかと思いますが実際の窓は一番右側だけ。残りの二つは、窓に見えるように漆喰で作ったわけで実際の窓ではないんですね。

そして、外壁は石積みによって造られたように見えますが、こちらも漆喰で石積みのように見せているだけで実際は違うんですね。この辺は、携わった職人さんのレベルの高さですかね!

館内から見ると、扉が一つだけというのがわかるかと思います

館内の二階から裏を見ると、一つだけ本物の扉があって他は壁。。

あとは、二階のバルコニーも見応えがあります!

こちらも当時の大工が見よう見まねで作ったもので、写真中央に写る柱も石造りではなく、木の柱を石膏で固めたもので石造りっぽく見せています。

入江長八の彫刻は必見!!

という感じで、洋風感満載の二階を紹介しているわけですが、この建物の造りを紹介する上で入江長八(いりえ・ちょうはち)という人物を語らないわけにはいきません!!

長八記念館にある自画像

西伊豆という地域に建てられている名建築には、彼の作品が残されている建物は多いです。入江長八(いりえ・ちょうはち)は、江戸末期から明治に活躍した左官職人で、若い頃に絵や彫刻を学び、その技法を漆喰細工に応用して、建物の装飾を芸術にまで高めた名工です!

西伊豆には、彼の作品が取り入れられている建物がちらほら見られるんですが、この建物にも長八と思われる作品が数多く見られるんですな~~

家紋の中に描かれたボタンが、実に素晴らしい

入り口の玄関を見上げるとこうした造りが見られますし、、、

二階の部屋の天井には、、、

ランプを吊るすためのものっすね

龍が描かれた作品が見られました。見る位置によっては龍の目が緑色に輝くとのことですが、あんまわかんなかった。。

カラフルなのがたまらない

こちらは1階の天井に造られた作品ですが、椎茸(しいたけ)の裏側に描かれたものをイメージしてるとのこと。確かに、椎茸に見えますわ(*´▽`*)

そして、館内にある長八の作品の中でも、一番見応えあるのがこちらの作品。

激しい雨に立ち向かう、勇敢なトラが描かれています。その表情が凄くリアルで、見入ってしまいますわ。。

という感じで、館内のいろんなところに長八の作品が見られるわけですが、なぜこの建物に彼の作品が取り入れられているのか??

長八は、絵画や彫刻の勉強のために江戸の深川へ行ってたわけですが、その交通手段として、ここから出ていた船に乗って行ったそうなんですね。つまり、今でいうスポンサーの役割を担っていたのではないかと、スタッフの方はおっしゃっていました!

長八記念館に描かれている龍の絵

今回は松代家住宅を紹介してますが、長八に関する施設としては、戸田からさらに南下した場所にある松崎町に『長八記念館』『伊豆の長八美術館』があったりするんすわ。

さらには、旧岩科学校、つげ義春ゆかりの宿として知られる老舗旅館『山光荘』でも彼の作品が見られるなど、西伊豆には長八に関する場所はたくさん。山光荘は”長八の宿”とも言われ、さらには色んな歴史を秘めた宿でもあるので、マジでオススメっす!!

庭には巨大な伊豆石の門柱が!

庭もいろいろ見所があるので、さらっと紹介!

運ぶのと立てるの大変だっただろうな・・

こちらの門柱は伊豆石の一本物を使用。その高さは270cm以上ということで、すんげぇ重かったでしょうね。。船でここまで運んだんだと思いますが、ここに下ろして立てるだけでも大変だったでしょうね。。

あと、こちらのアーチも必見!!

こちらは切り石をアーチ状にしたもので、西洋建築の雰囲気を感じられますね。大変きれいなアーチの形をしてますが、職人さんの腕が素晴らしかったんでしょうね〜〜

住宅の横に建つこちらの建物は、今は受付になってますが、かつては見世でした。一階は帳場、そして二階には住み込みの使用人の部屋があったそうです。

入り口の脇にある蔵は、なまこ壁や黒漆喰いなどの格式高い造り。

屋根には鬼の漆喰彫刻があります。睨んで、魔物が来ないようにしているそうですよ!!

その他、蔵の中には三代にわたる松代兵作の写真があったり、、、

松城家で使われていた品々もあります

こちらは舟箪笥。舟が荒波にやられた時に貴重なものを詰め込んでおくもの。海沿いの町にはこうしたタンスはたくさんあったと思いますよ。日本海側の北前船関連の施設とかね!

意匠や釘隠しなどは要チェック!

二階と庭を紹介したので、続いては1階を紹介することにします!

1階には、このような素晴らしい造りの本玄関がありますが、こちらは、大事なお客さんを迎えるための玄関。

屋根をよく見ると、鶴と亀が彫られた造りが見られます。これは、三島大社の建築に携わった石田半兵衛によるものとのこと。

1階はこうした和の造りなんですが、2階の雰囲気とはえらい違いっすね。んで、1階を鑑賞する際にぜひ見てほしい点が多々あるんですが、、、

まず一つが、こちらの釘隠し。確か三種類くらいありましたが、もしかしたら他にもあるかもしれません。。

あとは、襖の把手もよくよく見ると、色んなデザインがあって面白いですよん♪

あとは、”松代”という名字なだけに松の意匠も館内ではちらほら見受けられます。

蔵の扉の下にも松の意匠が!!

こちらは、格式の高い方をお迎えする上段の間。壁や天井には金箔があしらわれていたそうですよ!そして、この部屋にはプチャーチンの娘も来たことがあるとのこと。

プチャーチンって誰かってことですよねww

ロシアの使節プチャーチン提督が乗っていたディアナ号が、津波のよって破損したものの、日本人が彼らを救助して船員の方々は戸田村を宿所とした物語がありました。近年で度々話題に上がる、串本のエルトゥールル号の話みたいですね。

以上の歴史があったことで、その後にはプチャーチンの娘が明治20年にお礼に訪れ、この上段の間に上がったそうです。その時には、イヤリングか何かを寄贈したそうで、それは戸田村の郷土資料館に今も展示されているとのことです。

この建物を知ることで、いろんな歴史とつながってきますね〜

段があることで格式が高いことを表す

はい、以上ですかね!

だいたい1時間くらい滞在してじっくりと館内を鑑賞させていただきましたが、もしかしたら私が見逃している見所も、もしかしたらあるかもしれないです。

とにかく、見所満載で素晴らしい建物でした(*´▽`*)

おわりに

以上になります!

松城家住宅があるのは、西伊豆方面という公共交通機関ではなかなか行きづらい場所にはあるものの、ここ以外にもロシア船を救助した物語に触れることができる、日本一の深海として有名な駿河湾の深海生物について触れることができる沼津深海生物館もあるし、世界一大きなカニであるタカハシガニも有名だったりと、結構ネタが豊富な場所だったりします!

あとは、看板のないレトロな中華料理屋さんもあったりとかね!

まぁ何はともあれ、近代建築とか建物好きな方であれば絶対楽しい場所だと思いますので、ぜひぜひ足を運んでみてくださいね〜

参考文献

詳細・地図

住所 静岡県沼津市戸田72
営業時間 9:00~16:30(入館は16:00まで)
入館料 大人(高校生以上)300円、小人(小中学生)100円
休館日 水曜日(水曜日が休日の場合は翌日)、年末年始(12月31日・1月1日)
電話番号 0558-94-3115(戸田観光協会)
駐車場 無料
アクセス 修善寺I.Cから車で40分ほど
リンク https://www.city.numazu.shizuoka.jp/kurashi/kyoiku/kyoiku/bunka/matsushiroke.htm

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