【恐怖の地方病】山梨県にある杉浦醫院で死の病を撲滅した歴史を学ぶ!

↑更新・取材裏情報はTwitterにて(^ ^)
前ページでは杉浦醫院の内部を紹介しましたが、ここからは原因不明だった地方病をどのようにして撲滅していったのかの背景を紹介していこうともいます(*’▽’)

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 恐るべき地方病の歴史に迫る!!

地方病とは、甲府盆地で古くから恐れられていた病気でした。この病気にかかると、お腹が異様に膨れ上がってしまい腹水が溜まり、しまいには死に至ってしまう病気でした。日本住血吸虫は寄生虫であり、この寄生虫にかかる病気はずっと奇病とされていました。
今でこそ、上のサイクルが解明されているものの、杉浦建造さんが地方病の原因を突き止めるまでは、「なぜ病気にかかるのか?」「いつ、自分も病気にかかってしまうのか?」と、甲府盆地に住む方は恐怖におびえていたという。
そんなことから、地方病の蔓延が落ち着く頃(1960年代か70年代ころまでかと・・)までは、「山梨県にお嫁に行くのは地方病にかかって死に至る覚悟をもっていかなくてはいけない」といわれており、山梨県の男性は敬遠されがちだったという話も聞きました。
恐ろしいですね、地方病。。
そんな地方病の解明は、とある女性が献体してくれたことから始まったのです!!

とある女性が献体に名乗り出た!!

▲地方病の患者を診る「杉浦建造氏」
そんななか、明治30年の時でした。山梨県の有名な温泉街である石和に暮らしていた「杉山なかさん」という農婦の女性が、お腹が膨れる原因をつかんでくれということで杉浦醫院へ訪れました。しかし、杉浦建造先生は「これは腹を割ってみないとわからない」という結論に。
そして、山梨県ではまだ献体をしてくれる方がいなかったため、杉山さんが「自分の息子や孫がこの病気にかからないように、私のお腹を割って原因を突き止めてください!!」ということで献体してくれることになったのです。
そして調べたところ、今までの十二指腸中や回虫とは異なった卵が発見されたのです。ただ、この解剖で分かったのはこれだけで、この卵は一体どんな虫が産むのかを特定することまでは出来ませんでした。
そして7年経っても次の献体者が現れず、調査は進まず。。。
▲ミラシジウムの成虫
そこで、甲府市在住である三上三郎氏が自分が飼っている愛猫(ヒメ)を田んぼに放して水につけてこの病気にかかるのを待ちました。すると、猫のお腹が大きくなり桂田富士郎という医学者の方を呼んで解剖したら、オスとメスが合体した成虫が門脈(肝臓へ向かう部分の血管)に住みついているのを発見したのです。
そして、こいつは「ミラシジウム」という虫であり、このミラシジウムこそが地方病を引き起こす根本原因だったわけです!!
体内に潜んでいたミラシジウムの成虫はオスとメスが合体しているため、鬼のように卵を産みまくることが出来ることで肝臓の前に血管が詰まり、肝機能が弱まることで腹水が溜まりお腹が異様に膨れてしまっていたのです。とりあえず、体内で卵を産む生物の存在は確認できたのですね!そして、次のステージへ。

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いかにして体内に虫が侵入したか?

そして、次のテーマとしてはこの虫がどのようにして体の中に入ってきたか??
そうなると、普通は口から入ってくると考えますよね!そこで、山梨県内では飲み水に気を配って、飲み水は沸騰させてから冷やして飲むようにしていたのです。
しかし、そうしても何故か患者さんは減らなかったのです。そこで、京都大学の藤波鑑(ふじなみあきら)教授は、広島県片山地方にて牛を用いて実験を行いました。一つのグループには口袋をつけた牛を10頭、もう一つの牛には4本の足に足袋をつけた牛を10頭用意して、どちらの牛が感染するのかというもの。
そしたら、なんと口に袋をつけた牛が感染、つまり皮膚から感染することが分かったのです。
この卵から孵化したミラシジウムは大変小さいもの、しかも48時間以内にこいつは死んでしまうのです。ということは、こいつは死ぬ48時間以内に何らかの生物に入り込んで、その生物の中で二世代・三世代を生み出して生き延びて大きくなったものが人間の体内に入るのではないか。
つまり、「何らかの中間宿主が存在するのでは」という結論に至ったのです!では、その中間宿主はいったい何なのか?

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ミラシジウムが寄生した中間宿主を突き止めた!

この宿主を突き止めたのが宮入慶之助という方でした。この病気が日本の中で解決することが出来たため、この病名が「日本住血吸虫症」と呼ばれることになったのです。では、地方病が蔓延する原因でもある中間宿主はどのようにして判明したのか??
▲昭和町の名物だったゲンジボタル
この中間宿主を突き止めるにあたり、必要になってくるテーマが「ホタル」なのです。実は昭和町(旧昭和村)という場所はホタルで有名なだったそうですが、このホタルがキーになるわけです。
というのも、杉浦建造さんは山梨県の中で地方病の患者が多い場所には決まってホタルが生息しているというということに気づいたわけです。そこで、中間宿主の正体はホタルが幼虫の時に餌にする「カワニナ」という貝なのではないかという仮説を立てたのです。
▲ホタルの餌になっている「カワニナ」
そのカワニナっていう貝はこちらです。水中にのみ生息する貝であり、ホタルがいる場所には必ずこのカワニナが生息しているのです。しかし、カワニナの貝の部分を割って中を調べたもののミラシジウムの幼虫は発見されませんでした。
▲中間宿主の正体「ミヤイリ貝」
しかしその数年後、九州帝国大学の宮入先生が筑後川沿いで採集したとある貝に幼虫があることを発見したのです。しかし、この巻貝はカワニナと思いきや巻き数が違ったんですね。カワニナは4巻きの巻貝であるが、幼虫がいた貝は7巻だったのです。それで、巻き数が違うことから中間宿主の正体はカワニナではなくこの7巻の貝だと判明したのです。
そして、この7巻の貝には名前がなかったため、発見者の名前をとってミヤイリ貝(宮入貝)と名付けられたのです。
そして、ミヤイリ貝を撲滅すれば地方病のサイクルが停まると判明したことから、甲府盆地ではミヤイリ貝の一斉駆除を行います。ただ、その作業は手作業で摘み取るだけでなく、火炎放射器で焼き切るなどの方法をとったことで、ミヤイリ貝といっしょにホタルの餌となるカワニナも減少の一途をたどることに。。
そのため、最終的にはホタルは激減してしまい、今では愛護会が幼虫を飼育して川に放つなどの活動を細々と継続しているという。昭和町のホタルは昔から愛されていたようで、それは昭和町の学校の校章にもホタルが描かれているほど。一旦生態系を崩すと元に戻すのはそう簡単にはいかないですからね。。
ちなみにですが、今は甲府盆地で地方病はないものの、外国では今現在もこの病気で苦しんでいる方がいるそうな。この地方病である「日本住血吸虫病」は、病名に「日本」とはついているもののこの病気は日本特有ではなく、中国からフィリピンなど東南アジア方面では今でもこの病気が蔓延しており、約2億人近くの患者がいるといわれているそうです。

まだミヤイリ貝を撲滅できていない!

ミヤイリ貝は毎年のように採集をして、年度別に生息数をカウントしていたようですが、山梨県の甲府盆地では平成になってもなかなかミヤイリ貝を撲滅することができませんでした。ところが、同じ地方病が蔓延していた広島県・佐賀県・福岡県では、県内から一匹も発見されなくなったため、すでに地方病の終息宣言を出しているようです。
一方、山梨県はミヤイリ貝を全滅にはできず、いつになっても終息宣言は出せなかったのです。
そうしているうちに、終息宣言を出せない状態は山梨県の経済にも大きなダメージを与えていました。というのも、山梨県は国民体育大会の最後の開催地であったり、企業も「そんな危ない場所に会社を作りたくない」など様々な部分で敬遠されてしまうことから、県自体も活気がなくなってしまう。
▲庭に展示されている「地方病流行終息宣言の碑」
そこで、平成8年にミヤイリ貝はいるけども、終息宣言を出したのです。ただ、他と同じ終息宣言を出すと、他所(よそ)に怒られるということで「終息」の前に「流行」という言葉を補足して、ミヤイリ貝はいるけども流行は去りましたという意味の「地方病流行終息宣言」を出したのです。
ということで、まさに今現在も山梨県内にミヤイリ貝は生息しているのです。でも、地方病の患者はゼロだそうです。

最後は事務室にて談笑(笑)

▲杉浦醫院の館長である中野さん
杉浦醫院について一通り説明をしていただいた後は、事務室にて談笑しました(笑)
そもそも何でここに私が訪問したのかとか、私が「知の冒険」というブログをやっているという私の背景も含めて。
元々中野さんは八王子の方で教員をしていたそうです。この杉浦醫院は中野さんの貢献が大きかったことで、建物をぶっ壊さずに今の博物館として残っているとのこと。
中野さんとは、杉浦醫院のことだけではなくここ昭和町の歴史や、甲府で発生した甲府大空襲、さらには甲府にあった穴切遊郭に関してなど様々なことを話してくださいました。このような博物館に来ると、館長さんと仲良くなったり、事務室に通していただいて談笑したりという経験ができるのが本当に醍醐味です!!
中野さんには私のブログを紹介して、ブックマークしていただきました。この記事見られたらちょっと恥ずかしいですが( ´ ▽ ` )ノ

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おわりに

いかがだったでしょうか?
私は大学時代の卒業論文で、山梨県の増冨ラジウム泉に関しての研究をしていたこともあり、結構山梨県のことは元々知っていたつもりではあったのですが、山梨にこんな歴史があったなんて全く知りませんでしたよ( ;∀;)
探せばいろいろあるもんですね。この杉浦醫院はお客さんの数にもよりますが、スタッフの方が大変丁寧に解説してくれますので本当に勉強になるスポットです!館長さんと仲良くなったので、また山梨県に行ったらあいさつしに行こうかな~~(*’▽’)

参考文献

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詳細・地図

住所 山梨県中巨摩郡昭和町西条新田850-1
営業時間 9:30~16:30
(最終入館は16:00まで)
入館料 大学生・一般 200円
小中高校生 100円
(団体50円引き)
休館日 土曜日・祝日・年末年始
駐車場 無料
電話番号 055-275-1400
アクセス 中央本線甲府駅より車で約15分
JR身延線国母駅より車で約5分
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