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酒を飲ます代わりにボディーガードを
あと聞いたのは警察や夜僧子(よぞうこ、よぞっこ)に関する話。

現在は朝食や夕食を食べる部屋になっているんですが、ここはお客さんがお部屋へ遊びに行く前に酒を飲んでたりしていた部屋だったとか。んで、ここでは警察の方をタダで酒を飲ませていたという。
なんでかというと、お客さんの中にはカタギじゃない方もいたようで、酒飲んででもいいからここにいてもらい、もめごとが起こったら対処してもらうというボディーガード役を担ってもらっていたという。

あと、この階段の奥は今は風呂場になってるんですが、その場所には夜僧子という役目の人が常駐していた部屋があったという。
夜僧子って初めて聞いた単語だったんですが、どうやらこちらは警備員的な役割をしていたとか。昔はロウソクを灯りとして使っていたため、火事が起きないように、夜に見回りしたりするみたいな。
遊廓や赤線の時代に関して聞けたのはこのくらいですかね〜。まだまだいろんな話はあるんでしょうが、それはまた次来た時に聞いてみることにしますかね。
続いては、売春防止法が施行されて旅館に転業した後の話。
工事関係者のお客さんに支えられる

赤線が廃止した後は、旅館に転業して中村旅館として営業を続けてきたわけですが、旅館になってからは工事関係者の方が長期で泊まってくれていたという。
娘さん:「道路とか小学校、あとは病院を作る工事関係者の方が一年とか泊まってたみたい。あの時は景気は良かったからね。あとは自衛隊の方が泊まってたのよね。なんでかわかんないけど。。」
これは、他の元遊廓旅館でもよく聞く話で、高度経済成長期からバブルの頃にかけてのいい時代の時は、黒石市も人口が増えたことで小学校の建設、さらには道路工事などの需要が増えたことで、それらの工事関係者の方が長期で宿泊してくれたという。
ただ、それは昭和までの話。平成に入ると客数は落ち込んでいくことになる。。が、昔から来てくれた常連さんがいてくれたことで客足は途切れはしなかったという。そんで現在はどうかというと、コンスタントにお客さんは来てくれていることもあり、営業は続けられているという。
ここ数年では、『遊廓に泊まる』という本も出版されたこともあって遊廓などに関心をもつ私みたいなお客さんも多いとか。最近では佐賀から元遊廓旅館を巡っているという若い女性の一人客もいたんですって!
遊廓だった過去

今ではこの旅館が元遊廓だったということを言われれば話すようになったそうですが、それはここ数年のこと。
お母さん:「昔はここが遊郭だったとは言わなかったね。何も知らないで宿泊してきたお客さんが、『えっ、ここって昔遊郭だったんですか?今もそういう商売してるんですか?』って言う方もいてね。そういう偏見だとかもあったから、旅館にして間もない頃は言いたくなかったんじゃないかな。」
近年では『遊廓に泊まる』という書籍も出版され、ここが遊廓だった事は知られているので隠すこともないとのこと。
とはいえ、現在でも黒石市の方では古い建物を保存していこうという方針はあるものの、この中村旅館はその保存対象にはならないのだという。いろいろ聞くと、役所の方で「元遊廓」というのが引っかかっているのかどうなのか、、、
お客さんが勝手に改造・・
お母さんから話を聞いてると、こんな話が飛び出してきました。それは、中村旅館の見所でもある朱色の階段にまつわる話。

創業時からあるこの階段。噂では「ここに女性が座って顔見せをしていた」という説が流れているらしいのですが、お母さんに聞くとそれは怪しいとのこと。
お母さん:「なんかお客さんからもそんなこと聞いたことあるんだけど、私はそれは違うと思うのね。たぶん誰かがインターネットか何かで書いたのが広まっちゃったんじゃないかね」
というのは前置きで、この階段には驚きの話がありまして、、

というのも、上の写真のように中途半端な長さの滑り止めが付いてるんですが、なんとこれはいつだったか、宿泊客の方が勝手に取り付けたらしい。。
マジかよwww
お母さん:「なんか玄関の方で音がすると思ってね。向かってみたらお客さんが『危ないから付けてあげたよ〜』って言ってさ。勝手に取り付けちゃったの。」
電動ドライバーでつけたみたいだが、創業時からあるこの階段を勝手に改造してしまったそうです。すげぇ客がいるもんだな。。悪意はないんだろうが、やるならやるで許可取ればいいのに、、クレイジーだわ。。
次々と昔のものが盗まれる。。
改造というのもビックリですが、聞いててさらに驚くのは建物に昔からあるものを盗む事例が多発しているのだという。

木造の古い建物だと、このように打たれた釘の頭が見えるのは見た目的に良くないということで、釘隠しが取り付けられているんですね。お寺などの昔の木造建築物にはよくこの釘隠しが取り付けられているんですわ!

そんな釘隠しがこうやって盗まれてしまうわけですよ。これにどのくらいの価値があるのかわからないですが、物好きがいて持って行っちゃうんでしょうね。

さらにはこの朱色の階段にも被害が及んでいるという。お母さんが「これ見てよ!」と示した場所を見てみると、、

こんな感じですわ。。本来だと左の写真にある金色の部品がくっついているんですが、これが剥がされてしまっているという。。
この部品は去年とかここ最近で一気に無くなりだしたという。この部品を盗んで自分の家に保管しておくのか、どこかの質屋にで売りに出すのかようわからんですが、こうやってこそこそ盗み出す馬鹿者がいるそうなんですわ。。
いや〜本当に聞いてて怒りが湧いてきますわ、こりゃ。
ただこれ、中村旅館に限らず八戸市にある新むつ旅館でも聞きましてですね。釘隠しやら昔の雑誌やらが、どんどん消えていくらしいんですわ。。
中村旅館を案内してもらった

そんな残念な話があったりはしましたが、お母さんも娘さんも本当に親切にいろんな話をしてくれました!
夜が明けて朝になり朝食をかっ食らう事に!!
やはり、味噌汁、納豆、鮭、ご飯のコンビネーションは王道ですね。二杯くらいご飯お代わりして朝からお腹パンパンになりましたぜ。

スマホで新日本プロレスの試合を見ながらご飯食べていたんですが、部屋の中を見回すと神棚がありました。昔の建物にはやはり神棚は多いですね。

朝ごはんを食べた後、私は東京へ帰るべく八戸駅へと向かわなきゃいけなかったのですが、お母さんに少しだけ館内や周囲を案内していただきました!

二階には確か部屋が六つほどあり、その周囲を上の写真の細い廊下が囲っている感じ。この廊下を歩くと二階を一周できるんですね。

そんな廊下にある手摺りに目を向けてみると、形が気になる。どうもこけしに見えるんですが違いますかね?考えすぎですかね?
東北地方で生産されまくっているこけしですが、黒石では津軽系こけしというものが作られているそうで、黒石市内には「津軽こけし館」という博物館もあるそうで。
なので、ここを建てる時にそのこけしをイメージして作ったのかな〜なんてね。お母さんに一応聞いてみたが、「ん〜わからんね〜」とのこと。

一階に降りてきました。昔は入り口の扉の上下には青とか赤とかのステンドグラスが付いていたそうですが、今はそういったものは見られませんね。このロビーも昔は襖(ふすま)で覆われていたそうです。
ロビーの床に関しても、昔の床の上に今の床が敷かれているとのこと。

隅に目をやると、こんな下駄箱がありました。これもだいぶ昔からあるものとのこと。創業時からあったやつなのかな??

そんな風にロビーで話していると猫ちゃん参上。4匹くらいの猫を飼っているというか野生の猫が住み着いているのか、しきりにうろついておりました。
せっかくなので目線を頂いている瞬間をパシャり!

外に出るとまた猫ちゃん。
この猫ちゃんたち。中村旅館の中に入りたいときは、鳴き声をあげて「扉を開けてくれ〜」と切に訴えてくるんですよ( ´ ▽ ` )ノ
いいな〜私も猫になって食って寝るニート暮らししたいわ。

玄関から横に目をやると庭がありました。現在の庭は草木が生えるだけの場所になっていますが、昔は池があってその上には橋がかかっていたそうです。風情ある景色だったんだろうな〜。

またこけしらしき形の柵が。猫ちゃんが削ってしまったようで、フライドチキンの骨みたいになってた。。

入り口の扉もなかなかのデカさ。旅館というか牢獄の入り口みたいや!
扉は所々破損していて、屋根から雪の塊が激突したりというのが主な要因だとか。黒石は凄い雪が降るらしいです。だよね、11月でもめっちゃ寒かったですもん。

あとは、建物の外側や内部もよくみると昔ながらのつくりが見られたりしました。
そんな感じですかね。一泊したものの、今思うともっと聞きたかったことが出てきてまた泊まりに行かなくてはと思う今日この頃。また泊まりに行かなきゃな!
おわりに

新幹線の時間が迫っていた関係で、お母さんとの話を切り上げて帰らなくてはいけなかったですが、もっといろんな話をしたかったな。
最後は外まで見送りしていただき、本当に娘さんとお母さんにはお世話になりました。次行く時は何かお土産でも持っていこう!
まだ黒石市内で行きたい場所もあるし、近くの弘前市にも行ってみたいのでまた一年以内には行こうと思っています。新幹線使えば半日で行くことはできるものの、予算との相談かな。。でも、本当に行ってよかったです。
お母さん、娘さんお元気で!
参考文献
詳細・地図
住所 | 青森県黒石市浦町1丁目33 |
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駐車場 | 無料 |
電話番号 | 0172-52-2726 |
アクセス | 黒石市駅から徒歩12分ほど |